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Showcase Vol.2 Stockholm × Tokyo × Object ~作曲家座談会 7


・ Curiousの向かう先



森:なるほど。ちなみに今は活動の方向としてはどんな感じなんですか?


宗像:作曲でですか?


森:いや、どっちでも。アンサンブルとしてでも。


宗像:どうですかねえ。なんかただ、やりたいことをやってるだけみたいになってきましたね、最近。


渡辺:ははは。


宗像:もうちょっとプロモーションとかした方がいいのかな。だんだん面倒くさいことはやらなくなってきて。


森:一昨年でしたかね、Curious日本に来ましたよね?


宗像:そうですね。


森:僕はあれを見に行って、すごく感銘を受けて。確か12月でしたよね?


宗像:そうですね、12月でしたね。


森:12月で。僕がその年に見たコンサートの中では一番良かったですね。


宗像:ありがとうございます。でも、どうして?


森:うーん、まあこういう演奏とか音楽は聴けないからっていうか。


宗像:うーん。


森:まあないんですよね。音楽の種類がというのもありますけど、さっき好きなことをやってっておっしゃってたじゃないですか。それがすごく感じられたというか、自由で囚われてないというか。だからもう圧倒的に良かったですね。結構その日疲れてたんですけど、全く眠りもせず。


宗像:あーそうですか。


森:あとは取り上げたスウェーデンの作曲家のエステティックが共通してるってのがすごく印象に残りました。それもあって、スウェーデンのシーンとかにも興味が出てきて。さっきも少しそういう話をしましたけど、でもメインストリームじゃないってことなんですね。


宗像:全然違いますね。ま、スウェーデンの中でも僕たちがよくコラボレーションする作曲家というのが、何人かはいるんですけど。ただ、本当に多くなくって。


森:そう、前におすすめスウェーデン人作曲家みたいなのをメールで聞いたときも、うーん難しい、出てこないなーみたいな感じで、ああそんなにいないのかって感じでしたね。


渡辺:笑


宗像:うーん、そうですね。


森:もう一つ聞いてもいいでしょうか?この間ゆきちゃんに教えてもらって、アメリカのコーネル大学(https://www.cornell.edu)のセミナーでマーリンがオンラインでオープンなレクチャーしてたじゃないですか?


渡辺:うんうん。


森:で、僕も聞かせてもらって、その中で面白かったのが、オブジェクトをいっぱい使ったりとか、彼女の作曲の仕方とかの話をしてる中でも、いろんなもののヒエラルキーをなくしていくという方向に彼女は向いているみたいな話をしていたんですね。そういうのって宗像さんも共通している感じですか?それと、そういう感じのエステティックが育まれる土壌みたいなものがスウェーデンだったりスカンジナビアにあったりするんですかね?


宗像:いや、ないです。


森:ないですか笑。


渡辺:笑


宗像:あえて言うとすれば、、友達同士で影響し合ったという感じかな。


森:ふーん。僕がちょっと思ったのは、ラッヘンマン(注:楽器の奏法を大きく拡張したことで知られる21世紀を代表するドイツ人作曲家ヘルムート・ラッヘンマン:https://www.breitkopf.com/composer/561

とかから派生した先に、そういったエステティック的なものが乗っかって花開いたみたいな感じがしていて。僕は学者ではないので間違ってるかも知れないですが、ラッヘンマンもおそらくそういうヒエラルキーを平らにする方向性の人だとは思うんですよね。


宗像:それはありますよね。ていうか、まず特殊技法を使うところからして、マーリンも僕も大好きですし、その延長にやっぱり裕紀子ちゃんが「nonoji」で言うように、楽器を物体、オブジェクトとして見て作品を作るかってのがありますよね。


森:うん


宗像:それとやっぱりね、さっきから話しているような作曲家、Hanna Hartmanとか、日本ツアーの時に演奏したYlva Lund Berger(http://www.ylvalundbergner.com)とか、


森:あの人の曲もよかったですね。


宗像:彼女たちに僕らが影響を受けているのか、僕らが彼女たちに影響を与えているのかわかんないですけど。Hanna Hartmanはベルリンに住んでいるので、その影響があると思うんですけど。そうなるとインプロ・シーンからとか。あとはデンマークですね。さっき言った、Christian Winther ChristensenとかすごくExtended Techniqueをやる方で。


森:うんうん。


宗像:で、あとはSimon Steen Andersen(注:デンマークの若手・中堅世代を代表する作曲家:http://www.simonsteenandersen.dk)もいるし。それとシャリーノ(注:現代イタリアを代表する作曲家Salvatore Sciarrino:https://www.salvatoresciarrino.eu)ですね。


森:シャリーノの影響も大きい?


宗像:あるんじゃないかなと思いますね。要するに南から来るんじゃないかなとは思いますね笑。


森:僕が感じたのはなんていうか、ラッヘンマンとかシャリーノもそうですけど、特殊奏法が特殊奏法として聞こえる部分がまだある気がするんですけど、この間来日した時にCuriousを聴いてたら、もう特殊奏法と通常奏法の境目みたいなものがあんまりないというか。なんか特殊奏法と言っていいのかなって。


宗像:ああー


森:楽器の特殊奏法も通常奏法も、オブジェクトも全て自然に、当たり前のようにある、みたいな感じがしたので、シャリーノのエステティックはちょっと分からないですけど、よりヒエラルキー・レスな方向に押し進めたのかなって個人的には思ってるんですけど。


宗像:うーん、そうですね。


森:特殊奏法ですら最早ないっていうか。


宗像:あー、面白いですね。


森:特殊奏法を弾いているっていう感じが見ている分には全然しなくて。もちろん特殊奏法なんですけど笑。


宗像:笑


森:オブジェクト奏者がアンサンブルの両サイドにいて、ガンガンいろんな物体の音が鳴っていたら、別に特殊奏法っていうのもなっていう気分になりました。


宗像:そうだよね。ていうか、普通の奏法をしないと特殊奏法が特殊になりませんよね。


森:うん


宗像:マーリンに言うんですよ、僕。あなたの曲のアイデンティティは何だ?って聞かれた時に、オブジェクトを使うって彼女はよく言うんですけど、僕それやめなって言うんですよね。ヒエラルキーをなくす作曲をするんだって言うんですけど、オブジェクトを使う時点で、ヒエラルキーを作ってるんじゃないかと僕は思ってるんですね。


森:うーん


宗像:で、マーリンの曲のコア・マテリアル、中心にあるものって、オブジェクトを使うってことじゃないと思うんですよ、僕は。


渡辺:ふんふん。


宗像:で、オブジェも楽器も、ヒエラルキーなく同じ扱いをしているんですって言うなら、これはオブジェですって言わない方がいいよね。


渡辺:うーん。


森:究極的にはそうかも知れないですね。


宗像:究極的には笑。


森:でも、名前付けなきゃいけないからね。どうなんでしょうね、「ギターとピアノと花瓶のための」みたいな感じなんですかね。


宗像:あの、スウェーデンって、「男はこうだから」、「女はこうだから」って言い方できないんですよ、


森:ふーん


宗像:すごい怒られる。特に「女はね、、」って話はダメですね。


渡辺:うーん


宗像:でも結構無理があって笑。


渡辺:笑


森:でも、そういうところの影響が結構あるってことですかね?平等で、差はないっていう。


宗像:ていうか、これあくまでも、マーリンと、僕と、他に本当に数えられるくらいの作曲家が僕たちの友達かなーって感じですよ、スウェーデンで、作曲でいうとね。


森:貴重なコミュニティですね。


宗像:どうだろうなあ。でも、そんなに特殊じゃないような。だって裕紀子ちゃんだって、オブジェとかいっぱい使うよね?


渡辺:今となっては、みんな使うようになったけどって感じじゃないですか?


宗像:そうですか?


渡辺:うん。10年前はそんなにはいなかったと思いますよ。流行ったというか。


宗像:日本ではどうですか?


渡辺:日本でそういうシーンってあんまりないんじゃないかな。


森:サウンドアートとかではそういう人いますよ。オブジェ自体を作っちゃうんですよね。音の鳴るオブジェ。


渡辺:うんうんうんうんうん。


森:で、それをライブでパフォーマンスするっていう人は結構たくさんいますね。けど現代音楽界とあまり交流がないので、


宗像:え、サウンドアートと現代音楽って違うわけ?


森:日本だとガッツリ分かれてると思いますね。


宗像:変なの。


森:Curiousとか宗像さんがやってることって、日本だとサウンドアート系の人にも受けそうな気がしますけど、僕は。


宗像:この間、Eclat Festivalに行ったんですけど(注:ドイツ・シュトゥットガルトで毎年行われている現代音楽祭:https://eclat.org)、


森:はいはい


宗像:プログラムがちょっと大きすぎて、というか、作曲家が指定されたdurationを守らないんですね。15分くらいの曲にしてくれって言われてるのに、みんな25分とか、


渡辺・森:笑


宗像:すごい長くなっちゃって。ま、それで、オブジェがものすごい数のオブジェで。それで演奏して、その後、評論家にインタビューされたんですよね。「オブジェの扱いが下手だ」って。


森:下手?


宗像:うん。下手というか、僕の曲で大豆を掴んでパラパラパラパラパラってやるような部分とか、大きなザルみたいなのが3つくらいあって、それに大豆をのっけて振ると、空気中で舞った時に風が掃除してくれるんですよ。だけどそれ結構難しいんですよ。だから演奏者は見様見真似みたいな感じでやって、その道のプロのようにはもちろんできないんですけど。そういうのどう思いますか?ミュージシャンなんで、動きとかそういうのは下手ですよね。


渡辺:ああ


宗像:オブジェの扱い方とかちょっとアマチュアっぽさがあって。


森:そういう意味で評論家の人は苦言を呈したんですね。


宗像:そうそう。


森:もっとオブジェに習熟しないとダメだと。


宗像:もしダンスをやるんならダンサーにならないとダメだとか。もし演劇をやるんなら役者にならないとダメだみたいな評論家だったんですけど。


渡辺:なんかそういう議論ありましたよね、ダルムシュタットでも。プレイヤーに演劇させるのか、とか。Takasugiの曲で、演奏家が演技ばっかりしてるから、その時に結構議論になったような気がする。


宗像:森さんどう思います?


森:うーん、どっちも言い分はわかりますけど、でも多分アマチュアがやるから面白みが出るっていうのもあると思うんですよね。さっきの大豆を振るのだって、あんまり本物の農家っぽくなると、それはそれで別の文脈がそこで生まれてしまう感じもするし。サウンドが欲しいからやってるわけですよね?


宗像:そうそうそう。


森:そこで本当の農家のように見えると、また別の意味も生まれてしまうのかなとも思いますし、


宗像:そうですよね。


森:だから、その人たちの言う事もわかりますけど、狙いがどこにあるかによるんじゃないかと思いますけどね。


宗像:うん。だからかなり今オブジェを使う時とか、気をつけるというか、ちょっと考えますね。


森:でも面白いです。特殊奏法とかもそうですけど、普通の楽器の音を異化する効果があったわけじゃないですか、オブジェとか使うと相対化されて。


宗像:うん


森:だけど、それをやっていくと、オブジェそのものの文脈みたいなものが浮かび上がってきて、楽器についてはよく知ってるから異化とかそう言う操作はできるんだけど、オブジェはそれ自体の文脈をどう操作するかって言う問題が出てくるわけですよね、オブジェ自体の存在感が大きくなると。


宗像:そうそう、そうです。面白いよね、それ。


森:すごく面白いです。7/3のコンサートもオブジェがテーマなので、いい話が聞けたなと。


宗像:コンサートのタイトルにオブジェがあるんだ?


森:そうです。


渡辺:でもオブジェ・プレイヤーっていう概念もなかったですよね、昔は?


宗像:そうなの?笑


渡辺:はい笑。やっぱりマーリンとかがやり始めてからプレイヤーっていう概念が存在するようになったっていうイメージがありますけど。


宗像:前からいたんじゃないの?


渡辺:いや、パーカッションだったんじゃないですか?やっぱり。


宗像:ていうか、あまりにもパーカッション・プレイヤーって言える楽器じゃないからさ、オブジェって笑。


渡辺:うん、まあ。


宗像:僕らとしては、オブジェ・プレイヤーって書くときは、パーカッション・プレイヤーじゃなくてもいいよっていう意味で書くので笑。


渡辺:誰でも笑。


宗像:誰でもいいよっていう意味で書くので。


渡辺:そういう意味でも新しい概念って感じがしたのかも。そういう人はいたけど、名前はついてなかったような気がする。


宗像:名前笑。


渡辺:はい笑。


森:…ではそろそろ時間なんで、次回はスウェーデンに帰ったあとにでもできればと思うんですけれど、ちょっと時間を置いて、頭を冷やしてまたお話しできたらと。


宗像:全然違うこと言ってたりして。笑

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